荒川区に住んでます-うちの夫観察絵日記-

荒川区在住30代夫婦の日常。三度の飯と夫が大好きな妻による、夫観察絵日記ブログです。

いまだかつてない切なさ、マシュー・ボーンの「シンデレラ」で泣く

マシュー・ボーンのシンデレラ

夫とマシュー・ボーンの「シンデレラ」を観に行ってきました。

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ならぬ

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マシュー・ボーンの「シンデレラ」公式サイト より

 

とーーーっても楽しかったです!!!

今回の舞台は、夫にとって初・バレエ生観劇。

以前「眠りの森の美女」を観に行ったときは夫を置いていって「裏切り」と責められたので、ようやく一緒に行けました。

 

前回

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とりあえず目の周りを黒く塗れば(2016/9/16)

 

「初バレエ、眠くなったらどうしよう〜」なんて言っていましたが、いざ幕が上がると「すっごく面白い! ダンサーの動きがすごい!! またバレエ行きたい!!」と目を輝かせていました。よかったよかった。

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ということで大まかなあらすじと感想を書いていきたいのですが、実は観劇前も現在もプログラムなどで物語の詳細をちゃんと読んでいなくって、舞台でわたしが勝手に感じ取った物語と感動と妄想を書いていくので解釈が全然違ったらごめんなさい。マシュー・ボーンにも「いや、全然違うよ」だったらごめんなさい。

ちなみに初バレエの夫と休憩ごとに擦り合わせたらだいたい同じ解釈をしていました。

 

戦火の灰かぶりのシンデレラ

1幕あらすじ(勝手な妄想による)

「シンデレラ」といえば、魔法使いがかぼちゃの馬車でビビデバビデブーですが、マシュー・ボーン版シンデレラの舞台はなんと第2次世界大戦下、ナチス・ドイツから連夜の空襲を受けていた「ロンドン大空襲」時代の爆音と警報が鳴り響くロンドンの街。物語は空襲時に身を守るための注意を呼びかける物々しいニュース映画から始まります。 

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シンデレラなのか……?

 

シンデレラはひっつめ髪にメガネの地味な女の子。いじわるな義母や姉弟たちにいじめられ、車椅子の傷痍軍人の父の世話をしつつ下働きのように暮らしています。

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シンデレラだ

 

そんな彼女の心を慰めるのは、亡くなった実母が残してくれたのであろうキラキラのハイヒールでした。

ある日、シンデレラの家に空軍パイロットのハリーが避難してきます。ハリーは帰還して間もないのか、頭に巻かれた包帯に滲む血がまだ新しく痛々しい。爆撃の音を聞くと頭を抱えて怯えます。ハリーを介抱し、恋をするシンデレラ。しかしハリーは義母に追い出されてしまい、シンデレラは彼にまた会える日を夢見ます。

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とてもキュートなシンデレラと、彼女の妄想のなかではパリッと理想的なヒーローのハリー

 

そしてある晩、義母たちは舞踏会ではなく「カフェ・ド・パリ」という当時人気のあったダンスホールのパーティに出かけていきます。ダンスホールの客たちは遠くに空襲の音が聞こえる中で酒を飲み、着飾り、享楽的に踊り続けています。

 

家で気を落とすシンデレラの前に魔法使いのおばあさんならぬ白いスーツを着たやたら耽美な天使「エンジェル」が現れます。 

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天使にも死神にも見える妖しい存在のエンジェル。なんだかとってもマシュー・ボーン 

 

シンデレラはハリーに会うため意を決して靴を持って家を出ます。真っ暗な街を走るシンデレラ。しかしそこでまた夜間空襲が始まり、シンデレラは爆撃を受けて倒れてしまいます。

エンジェルによって目覚めたシンデレラは、狂ったように大きな月を背景にして夢の中とも雲の上ともつかぬ場所で戦闘機たち(のゴーストに見える)と楽しく踊ります。

エンジェルはシンデレラにパーティの招待状をプレゼントします。ニコニコなシンデレラはド派手なモーターバイクで元気よくパーティへ向かいます。ここで1幕が終わり。

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このシンデレラがはしゃいでとってもかわいい。でも……切ない……

 

2幕あらすじ

2幕。爆撃を受けたダンスホールは破壊され、人々が倒れています(実際「カフェ・ド・パリ」はロンドン大空襲で大きな被害を受けたそうです)。

現れたエンジェルが魔法で時間を巻き戻すと、倒れた人々は息を吹き返し絢爛豪華なダンスホールが蘇ります。

この場面が「わぁ」とため息が出るくらい、とてもきれいだったー!!

美しく着飾ったシンデレラはホールでダンスに興じ、正装した軍服のハリーと再会します。惹かれ合っていた二人は逢瀬を楽しみます。

 

しかし魔法が解けるとハリーはベッドに一人で目覚め、現実のシンデレラは爆撃に倒れたままピクリとも動かず、片方の靴を残して担架で運ばれていきます。

シンデレラを探すハリー。瓦礫の中にシンデレラの靴を見つけて崩れ落ちます。

ここで2幕が終了。

わたしはもうボロ泣き……。

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シンデレラの命が爆撃でどうなっているかもわからないし、ダンスホールも逢瀬も、夢見がちな彼女が好きな人に会いたい一心で見た末期の夢ならばこんな悲しくて切ない「王子とシンデレラのパ・ド・ドゥ」はないですよ!!!

 

3幕あらすじ

その切なさをふっとばすような3幕。

シンデレラの靴を抱きしめながら、ロンドンの地下鉄を彷徨うボロボロのハリー。

男娼や娼婦たちに誘惑され、ついやけになって関係を持ってしまったあとテムズ川に向かってオエー!!! 

その後も靴を持ったままフラフラしているうちにゴロツキにボコボコにされ、最終的に奇跡的に助かっていたシンデレラの入院している病院へ。生きててよかったシンデレラ。 

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こんなボコボコにされながらシンデレラを探す王子様は初めて観ました

 

病院のベッドで寝ているシンデレラですが、空襲のドサクサで父親を撃ち殺そうとした義母がシンデレラのことも殺そうとしているところを(父の遺産狙い?)エンジェルが助けます。

肝心のハリーはどうなっていたかというとエンジェルに電極をつけられて頭に電流を流されていましたが(なんでだろう、頭の怪我を治療してあげたのだろうか)、二人は再会して喜び合います。

そして最後は「シンデレラ」らしくハッピーエンド。義母は逮捕、シンデレラとハリーは爆音が遠く響く駅から汽車に乗り、父(生きてた)や心を入れ替えた姉弟たちに見送られ幸せそうに新婚旅行へと出発します。

 

と、話はこんなかんじでした。

ハリーが娼婦に変な病気を伝染されて病院に行ったのかと思っていたので、無事でよかったです。

 

重苦しい空襲警報から始まった物語に最初はどうなることかと怯えましたが、瓦礫の暗闇のなかでガラスの靴のようにきらめくシンデレラの好きな人に会いたいという気持ちと儚い命。

シンデレラの恋の力によって再生へ向かったハリー。

悲惨な状況のなかでも恋することの喜びと命の輝きが胸に迫る舞台でした。

そしてシンデレラとハリーが去ったあと、地味めな女の子の前にエンジェルが現れ「次はきみだよ」と新たな物語の始まりを予感させるエンディング。

終わってみればとっっっても乙女チックだったわあ。

 

プロコフィエフ万歳

あと今回の舞台での個人的興奮ポイントはプロコフィエフの組曲と物語のマッチ具合。

「シンデレラ」の組曲は「シンデレラの曲だ」と全く知らない状態で聴くと、


Prokofiev - Cinderella Suite - Cinderella's Waltz

 

A.  シンデレラが王子様に会えてお城の舞踏会でハッピー

B.  アダムス・ファミリー(アダムズのお化け一家)のサントラ

 

どちらの曲だと言われたら後者を答える人のほうが多いんじゃないか、と思うくらいその旋律にはどこかデカダンで魔術的な影がある気がします。

このワルツも、王子はシンデレラの幻を見て、シンデレラは舞踏会の幻を見ている。妖魔の類に化かされた二人が幻想の中で踊っている、としたほうがしっくりくるような。

プロコフィエフが「そんなつもりじゃないのに」と言ったらこれまたごめんなさいですが……。

 

「シンデレラ」は1940年から制作が開始され、ナチス・ドイツによるソ連侵攻や他の仕事での中断を経て1944年に完成しました。マシュー・ボーンはプロコフィエフがシンデレラを制作していた時代背景に今回の着想を得たそうです。ただ戦時下のモスクワやレニングラードを舞台にすればなんだかくどいし(包囲戦でロンドンより食べるに困っていてそれどころじゃないか)、戦時下のロンドンを舞台にしたからこその終末的な耽美さがあった気がします。

 

振り付けについては、わたしはマシュー・ボーン作品をまだ4作品しか観ていませんが、「シンデレラ」は今まで観た彼の作品のなかでもダンサーの見せ場があんまりなくて、正直「バレエ」というよりは「セリフのないミュージカル」スレスレというかんじではありました(特に1幕前半)。

しかし!!

プロコフィエフの音楽がダンサー・舞台・客席を包み込み混ざり合う灰色の世界を真っ白なエンジェルが闊歩するさまはまさに!!! 魔法にかけられたような妖しくも美しいひとときでした。この妖しさはバレエとバレエダンサーにしか出せない!!

そして「シンデレラ」は他の劇団の公演でも観る機会が多くありましたが、こんなに「王子とシンデレラのパ・ド・ドゥ」からの別れに泣かされたことはなかったので、やっぱりこの「マシュー・ボーンのシンデレラ」にはバレエという表現がぴったりで、この世にバレエがあってよかった、バレエって素敵だなと改めて思いました。

ということで今まで観たマシュー・ボーンのなかで一番好きな作品、一番好みの「シンデレラ」でした!!

 

ちなみにプロコフィエフの音楽はシンデレラのワルツも大好きですが、「アレクサンドル・ネフスキー」のカンタータがすっごく好きで学生時代は聴きまくっていました。

1939年に書かれたこちらの曲もまたファシズムが影を落とした時代の影響を受けていると言われていますが、結婚式の披露宴を挙げたならこれ↓で偉そうに入場したかったです。プロコフィエフ好きなので(何が一番好きかというと顔が好き)、本当はしゃべるときはルー大柴みたいにプロコフィエフだけは「プラコーフィエフ」って言います。


Sergei Prokofiev - Battle On The Ice

 

そしてまだ日記には書いていませんが、少し前から社交ダンスを習い始めたわたしたち夫婦。

家に帰ってさっそく「シンデレラのワルツ」で踊りました。

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荒川のお化け夫婦

 

今回の観劇で刺激を受け、練習へのモチベーションが上がりました。がんばろう! 

そうそう、ダンスホールのシーンではジルバっぽい振り付けもあって、やっぱり楽しかったです♡

 

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