荒川区に住んでます-うちの夫観察絵日記-

荒川区在住30代夫婦の日常。三度の飯と夫が大好きな妻による、夫観察絵日記ブログです。

出産の思い出(3)陣痛室へ:違う、そうじゃない

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とにかくカメラをどう受け取るか、どう撮るか、など段取りのことばかり考えていました

 

▼前回

診察→まさかの入院

18:40頃 病院に到着

夜の病院に到着。今日はお産が混み合っているとのことで、バタバタとした雰囲気でした。

まずは布団に横になり、NST(ノンストレステスト)の機械がつけられて陣痛の間隔と赤ちゃんの心拍を測りました。

心配していた赤ちゃんの様子は問題なさそう。

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痛みは、お腹の張りを示す数値が「80」まで上がると「うーん、張ってきたな」と少し痛いかんじ。NSTの機械をつけて30分近く経った頃、だいたい7、8分間隔に。 

分娩室のあたりから「うーっ」と他の妊婦さんの苦しそうな悲鳴が聞こえてきて、今まで何度か産科病棟に足を踏み入れたことはあったものの、初めて聞くお産の声に夫と緊張しました。

 

20:00頃 診察→入院→点滴

ようやく診察へ。お産が混んでいるという話の通り、曜日の担当の先生は出払っているようで、診てくれたのは以前エコーの練習台になったことがある若手の先生でした。

「子宮口が3〜4センチほど開いています、刺激しますね」とのことでしたが、グリグリとされても「アレ?」と気づかないくらい何の痛みもありませんでした。以前、37週の健診で同じようにグリグリされたときは激痛だったのですが謎。

「今日明日には生まれるかもしれないので入院してください」とのこと。用意してきた分娩用の前開きパジャマに着替え、分娩用のゴワゴワした紙おむつが装着されました。

ここにきてまさか入院になるとは思わなかったので夜ごはんを食べてこなかったことを後悔。お腹がすいた。

わたしはGBS(B群溶連菌)の検査が陽性で、分娩前に抗生剤の点滴を打たないといけなかったので、まずは点滴を打ちました。

そのあいだに夫にコンビニでごはんを買ってきてもらい、陣痛室の空きがなかったので廊下のテーブルでおにぎりを3つばかりと唐揚げをモソモソ食べて過ごしました。

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その後、特にやることもないので廊下をプラプラ歩いていたところ「大丈夫ですか?」と看護師さんに聞かれたので、「まだそんな痛くないんです、今日生まれるんですか?」と逆に聞いてみたのですが、「うーん、とりあえず子宮口4センチ開いてて痛くないのはラッキーですね」と励まされました。そうなのか。

 

21:00 陣痛室へ。お腹が痛くなってくる

ようやく陣痛室が空いたとのことで、夫と陣痛室へ。

移動中に「うーん、ちょっと待ってください」と看護師さんと夫に声をかけて、立ち止まって深呼吸したいくらいのギュッとした腹痛。

陣痛室ではベッドの上であぐらをかいて、ひたすら「赤ちゃんに酸素を送る」と思い続けて、フーフー息をしていました。

今回のお産ではソフロロジーというお産の痛みを和らげる出産法の本を買って、といっても「痛くても息をしっかり吐けば吸えるってことだな」と斜め読みしただけなのですが、印象的だったのは「きちんとママがリラックスしてお産をして、酸素を充分にもらった赤ちゃんは、生まれたときにお肌がピンク色」なんだということ。

それで呼吸をしながら「酸素たっぷりの赤ちゃんはピンク色のお肌!」と唱えていたのが、漫画の『動物のお医者さん』に出てきた「おいしいサイレージはオレンジの匂い」という呪文と混ざって、いつしか「おいしい赤ちゃんはピンク色の体……」とブツブツ唱えていました。

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さて気になっていたのは「餃子を食べたオナラ」ですが、陣痛室の向かいがトイレだったので、「でっかい音が出たらどうしよう」と夫がいるのが気になってオナラができませんでした。陣痛室の中では言わずもがな。

部屋の外ではまだ他の妊婦さんのお産でバタバタしていて物々しい雰囲気。

看護師さんには「またのちほど診察して、お産がだいたいいつ頃になるか説明できると思います」と言われていました。(しかし診察されることはなかった)

そういえば最初のおめでたがダメになって自然に出血が始まった夜に、奇しくもこちらの病院に救急で電話して、「お産が混み合っているからすぐ対応してあげられない」と言われたんだなあと思い出しました。

それで病院に行くのはやめて、「今お産の妊婦さん、わたしのぶんまでがんばってくれー」と念じながら、はじめてのおめでたを終えて。悲しかったけれど数駅先の病院では生まれる命がたくさん(しかも混み合ってる)と思うと、あの日は本当に励まされました。

バタバタした廊下の気配を感じているうち、そのときの自分が今まさにお腹を抱えてウーンと唸りながらも家から応援してくれているような不思議な感覚になって、「がんばるからね!」と気合が入りました。

 

静かにその時(シャッターチャンス)を待つ

陣痛室では夫としゃべったり、スケッチブックに日記を書いたり、デーツを食べたり、歯磨きをしたりとわりと普通に過ごしていました。

いきみ逃しのマッサージやボールを使うほどはまだ痛くはなかったので、持参した一眼レフのレンズも磨いたり。

じつはバースプランには「オナラが気になる」の前に「夫と赤ちゃんの写真を一番に撮りたい」と書いていて、助産師さんには「分娩後は疲れるから難しいかも」と言われていたのですが、どんなに疲れていようが絶対に叶えたい目標にしていました。

正直いろいろあって自分の体は出産に向いていないのかなあと自信がなかったのもあり、無事にお産を終えた今だからこそ「万一のこともあるかも」という覚悟も笑い話ですが、もし自分に何かあったとき、夫と赤ちゃんが幸せな人生を歩むために何が残せるのか、というのをおめでた期間中にずっと考え続けて、その答えが「写真を撮る」でした。

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しかし最高のモデルがババーンと登場して、わたしのカメラ人生で最高傑作が撮れるであろう機会。一発撮りの難ロケに挑む映画監督みたいな気持ちになり、「どの位置に来てもらえれば寝ながらでも撮れるか」とか真剣に考えて、陣痛どころではなかった。 

このときの痛みは5分置きくらいで、ズーンとお腹がすぼまるかんじ。息が詰まりそうになる痛さは40秒続く程度。まだまだいける。

たまに、ゴリ、ゴリ、と体のなかで石臼を動かすような骨が動く音が下のほうからして、これは初めての経験でした。

 

22:30 母の見舞い

ここで母が陣中見舞いに顔を出してくれました。

病院は夫以外の立会いはNGで面会時間外だったので、病棟を出てエレベーターホールで「がんばってね!」「うん」と短い立ち話。

このあたりから、思わず腰を曲げたくなるような下半身に響くズンとした痛みの波があり、立って歩いたので余計に痛みが強くなりました。

母を見送り、このとき「今だ」と思い、ずっとがまんしていたオナラを静かに無人のエレベーターホールに放っておきました。

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母が来てくれなかったらオナラのしどころがなかったので、本当に母には感謝しております。

あとでお医者さんが残り香を浴びたかもしれないけれど。

 

そしてスッキリ晴れ晴れとした気持ちで陣痛室に戻り、あぐらをかいて座りました。

今までの腹痛から数段階ステップアップしたような、ズーン、ギュギュギュとした痛みとともに、股のあいだがメリ……と下に向かって膨らむような感覚がしたので、あぐらをかいたかかとにお尻を乗せて抑えました。

これがいわゆる「いきみたい」というやつか。

看護師さんが「大丈夫ですか?」と部屋のドアを開けて声をかけてくれたので、「なんか、いきみたくなってきた気がします」と答えると、「こらえてくださいねー」とのこと。

夫に「いきみたい、っていう感覚がわかってきた気がする」と言った途端。

ドーン!!!

と、まるで体になにか大きなものがぶつかったような、体が上下に引きちぎられたような衝撃に襲われました。

胃は上に引っ張られて、胃のなかのものが一気に喉もとまでこみあげてきて、そしてかかとに熱いもの(そのときは赤ちゃんの頭かと思った)がボコンと隆起して『第三の尻』が出来てぶつかったように感じました。

「うわーっ!?」

赤ちゃんが出た!? と思って驚いて腰を浮かせて叫ぶと、正面に座っていた夫と目が合いました。

夫はスマホを握りしめて、まさに「あっけにとられた」顔をしていて、体が動かなくなっているのがわかりました。

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夫は看護師さんを呼びに行ったほうがいいのか迷っていたらしい

 

わたしの叫びに先ほどの看護師さんが飛び込んできて、夫に外に出るよう言い、すぐにNSTの機械がつけられ、お医者さんも入ってきて「子宮口全開」との診断。子宮口全開って、もう生まれるやつじゃないか。

廊下から見ていた夫によると、「あららー! 子宮口全開だー!」「こらえて!」と他の看護師さんたちも慌てていたそうです。

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診察されながら必死に『第三の尻』が発生したことを言わなきゃと思って、お医者さんと看護師さんに「お尻が3つになったようです!」とつとめて冷静に叫びましたが、「うん、よくわかんないけどがんばって!」とでも言いたげな無言の頷きで流されました。

「分娩室に行くから、ここで産んじゃだめだよ!」と言われながら、看護師さんに両手をとってもらって、おむつ姿でヨチヨチと分娩室へ歩いて行くことになりました。

心配そうな夫の姿が、陣痛室と分娩室のあるエリアを隔てたドアの向こうに見えました。

夫はこのとき、スケッチブックにわたしの様子や自分の気持ちを記録しておいてくれました。

23:00

痛みが激しくなり分娩台へ。

看護師さん、「全開です!」とちょっとあわててる感じ。

つまさん、がんばれ!すごくどきどき。

なぜか自分は分娩室へ行けず……なんでだろう。

→準備できたみたいで無事に入れた。

 

荒川おっとの記録より

あのときちらりと見えた不安げな夫は、「分娩室に入れてもらえないのだろうか」と心細くなっていた顔だったのか。

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陣痛がくるたびに先程食べたおにぎりが喉元までこみあげてきて、食道がザラザラして嫌なかんじでした。

「おにぎりが出ます」とふりしぼって伝えました。

看護師さんに、「出るのは赤ちゃんっ!」と励まされました。

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違う、そうじゃない……! 

 

(ちゃんと顔の横に洗面器を置いてくれました) 

次回、我が子との対面につづく。

 

▼次回

▼おめでた生活の記録