蚊にさされやすい人には少し試練……
荒川区ホタル観賞の夕べ
「荒川区に住んでます」といいながら最近は札幌に行ったり日本橋に行ったりする日記ばかりですが、我らがホーム・荒川区内でも相変わらずフラフラしています。
このたび大変貴重な機会をいただきまして、夫と荒川自然公園にて開催の「第19回 荒川区ホタル観賞の夕べ」に行ってきました!
こちらは荒川区内のボランティア団体「荒川区ホタルを育てる会」の方々と区内の幼稚園や小中学校の子どもたちが育てたホタルの幼虫を、荒川自然公園の「白鳥の池」の橋に設置した特設ドーム内に放流し、成虫となって飛び回る2000匹のホタルを観察するイベント。
毎年七夕の頃に2日間に渡って開催され、今年でもう19回め。なんと毎年2000人以上の来場者があるそうです。
イベントでは全長25mの真っ暗なドームの中を歩き、飛び回るホタルを観賞することができます。
ドーム内で頭上を飛び回るホタルの輝きに圧倒され、自然公園の池でささやかに光るホタルを見つけて美しさにうっとり……。
蛍、蝉、そして蜻蛉という夏の虫を愛でることは、すなわち「あはれ」という情緒を楽しむ日本人独特の詩趣に富んだ美学だと思います。
「あはれ」という言葉で自然に湧き上がる思いというのは、子どもの頃からの夏に出会ったものの思い出で培われてきたのかもしれないな、なんて考えたりします。大好きな言葉です。
これからも残していきたい自然、そして文化について改めて考えさせられた夏の夜でした。
ということで、いつもは夜に入れない自然公園のひっそりとした姿も面白く、とっても夏らしい雅なイベントでした。楽しかった〜!
ホタルの生態と育てる会
ホタルは自然環境のバロメーター
イベントではホタルの生態についての掲示があり、今まで全然知らなかったホタルの生態について勉強することができました。
ホタルにもゲンジボタルやヘイケボタルなど種類はありますが、寿命はだいたい1年。とはいえ長い時間をかけて成長するので、成虫として活動する時間はたった2〜3週間です。
初夏に産まれた卵は水の中で孵化し、1ミリくらいの幼虫になって5〜6回脱皮を繰り返して大きくなり、やがて冬眠します。
そして春になると幼虫は水の中から陸にあがり、土にもぐってサナギになります。
6月頃になると羽化し、1センチほどの成虫となったホタルは2〜3週間の儚い命のなか飛び回り、光ることでパートナーを見つけ、交尾して卵を産みます。
このようにホタルは卵〜幼虫のときは水の中、サナギのときは土の中、そして成虫になると空中で生活するので、水・土・空気という全ての自然環境が良くなければ育たないことから「環境のバロメーター」、「自然環境の結晶」とも呼ばれています。
ホタルは幼虫のあいだは小さいくせに巻き貝とかをムシャムシャ食べる肉食なのに、成虫になると草葉についた露しか飲まなくなるというので、このへんもなんとも不思議な虫です
荒川区ホタルを育てる会
本イベントの主催である「荒川区ホタルを育てる会」は平成9年(1997)に発足して以来、ホタルの里親活動をしていらっしゃいます。初めは10数人の小さな会だったのが、今では支援者は100人を超えるとのことです。
もともと荒川区にホタルを飛ばそうとする活動をしていた前身の会があったそうですが、それをたまたま引き継ぐことになった会長の林さんは特にホタルに関わったこともなく、初めのうちは失敗をしながらも、会員や区内の幼稚園児・小中学生たちと一緒にホタルを育ててきたのだとか。
荒川区ホタルを育てる会・特製うちわをいただきました。かわいい
「荒川区ホタル観賞の夕べ」で観ることができるのは、皆さんが約1年かけて大事に育て、5月に幼虫を放流したヘイケボタルの成虫となった姿です。
飼育にあたっては卵が乾燥しないように霧吹きをしたり、餌を与えて水をこまめに変えたり、冬に温かくしすぎて成虫にひょっこり育ちすぎないように室温や水温なども調整したり……聞くだけで大変!!
孵化したばかりのときは小さすぎてほとんど水槽のゴミと区別がつかないというホタルを育てるのも大変だし、公園に大きなドームを設営して受付をして、観賞会を催すのも大仕事。
しかも観賞会が終わればホタルの会はすぐさま来年の準備に入ります。成虫を捕まえ、産卵させ、そして孵化した幼虫たちは里親のもとへ。
このようにとっても地道な活動を何年も何年も繰り返し続けてこられてきました。
ホタルと人との関わり方を考える
荒川区ホタルを育てる会の皆さんの将来の目標は、現在のようなドームを利用するのではなく、自然のせせらぎでホタルが飛ぶ姿を見られるようにすることだそうです。
さて、飼育したホタルの放流とそれを観賞するイベントは全国的にも行われていますが、ホタルの生態系を考えずに安易に町おこしや子どもの情操教育のイベント化してしまい、逆にホタルの生育する自然や生態系のバランスを崩してしまっている場所もあるそうで、ホタル研究家の方が厳しい言葉で警鐘を鳴らしています。
ホタルを見に出かけて行き、ホタルを見た時に「ホタルが、いた!」といいます。しかし、そのホタルはその場所で生活(生息)しているのではなく、存在しているだけなのかも知れません。人々がホタルを見て楽しむために、人々にホタルを見せるために、ホタルの生態や生息環境を無視して、養殖・放流されているのです。
ホタルが自然に繁殖できるような環境を取り戻す活動ではなく、単なるイベントとして業者から購入したホタルを育てて飛ばすだけで終わってしまったり、屋台などを設営するせいでホタルが交尾できなくなったり、また観賞者のマナー(後述します)も問題となっています。
私たちは、まず、「ホタルは自然環境の結晶」という認識を持ち、ホタルが一生通じて暮らせるようなホタルの生態系を保全或いは復元することに全力を注ぐべきなのです。ホタルの生きる環境が整えば、生態系のバランスの中でホタルは徐々に増えていくのです。そうしなければ、本来のホタルの舞う自然は戻っては来ないのです。
(中略)
ホタルを守るということは、一番の天敵である「人間の身勝手さ」から守るということかも知れません。
ホタルを人の手で養殖することについて非難しているのではなく、「自然環境」について今一度考えてほしい、とおっしゃっています。
荒川区ホタルを育てる会・会長の林さんも
ホタルの会が、人工的に良い環境を作りホタルが住める場所を作ったとしても、荒川全体に広げることはとても大変です。私達一人ひとりが、身の回りの自然を良い環境にしていくことが大切です。
大人の人間が壊した自然は、人間の手で取り戻さなければなりません。これから何十年かかろうと、自然を戻したときは、ホタルも人間も心地よい生活が出来ると思います。それまでしっかりと環境問題に取り組んでいきましょう。
「第19回荒川区ホタル観賞の夕べ」パンフレットより
と同じ主旨のことを強くおっしゃっています。
「荒川区ホタル観賞の夕べ」でも、来場者であるわたしたちこそが、「ホタルきれ〜い、すご〜い」で終わらないように、ホタルが自然に繁殖するような自然環境を取り戻すことについて考え、行動していかなければいけません。
それが1年かけてホタルを育て、暑いなかイベントを催してくださる、育てる会会員の里親さんたちやボランティアの方々への、ホタルを見せていただく恩返しかもしれないです。
ホタル観賞が単なるホタル飛ばしイベント化するのは主催者の問題だけでなく、来場者の心構えの問題でもあるのかもしれない……
「荒川区ホタルを育てる会」の長年に渡る活動の象徴ともいえるのが、ホタル観賞の夕べを続けるうちに逃げたホタルがなんと公園のなかで自然に繁殖している「荒川区天然ホタル」の存在。まさに育てる会の目標が、少しずつ少しずつ叶っているみたいです。
ホタルが里親さんたちの手を離れ、子どもが独り立ちするように自然に繁殖する環境を取り戻せていけたら、そして街に住むひとりひとりがホタル観賞の夕べで見た美しいホタルの姿を心に描きながら、きれいな街と公園を作っていけたら、それはすごく素敵なことだなあと思います。
荒川区ホタルを育てる会の皆さま、関係の皆さま、素晴らしい時間をありがとうございました!
ホタル観賞時のマナーと虫よけ
ということで何もしてないくせにエラっそうに「人間の身勝手さを慎み、ホタルが自然に繁殖する環境作りを」などと書いたりしましたが、わたしは元来「蚊は絶滅していい」と自然に対して身勝手なことを言っている人間。
そう、蚊に刺されやすいタイプにとってはホタルの生育する場所って天敵(蚊)のいる場所でもあるので鬼門なんですよ……。
ホタル観賞の際の基本的なマナーは
・強い光を発するものを使わない
・ホタルに触れようとしない
です。
ホタルは光ることでオスとメスが出会い交尾をするので、強い光が周囲にあると交尾が出来なくなってしまうそうです。
そしてもうひとつ忘れてはいけないのが「虫よけ」のマナー。
夏のお出かけはシュッと蚊よけスプレーが欠かせませんが、ホタルも昆虫なので、「ディート」や「イカリジン」など強い忌避剤が含まれる虫よけをしていくと少なからず影響があるそうです。
これらは「ベープ」とか「サラテクト」とか一般的な虫よけスプレーに使われている成分です。
ということで本来なら何もつけずに行くのがベストだと思うのですが、公園での待ち時間も長いので、わたしは家のローズゼラニウムとミントをエタノールに漬けて作ってみたスプレーをつけていきました。20か所ちょっと蚊に刺されました。かゆい。
虫に刺されやすい人は、暑いですが対策に首にタオルを巻いて長袖長ズボンなどで防御したほうがいいみたいです。
またはこれ。
Lixada 虫除けウェア おしゃれ〜
テレビでちょうどやってましたが足の裏を除菌シートで拭くのもよいとか。
いちおうホタルと虫よけスプレーについてアース製薬に問い合わせた方がいらっしゃって、ツイートによると、
メーカーから回答がありました。
— KENZO (@kenzo_pix) July 10, 2018
効果の範囲は蚊に対して数cm
現地で散布しなければ特に問題なさそうですね pic.twitter.com/Bqk1CkeGwv
ディート自体は塗布したところから数センチくらいしか効き目がないので、事前にスプレーをして、ホタルから離れたところから観賞するぶんにはセーフみたいです。
でも荒川区ホタル観賞の夕べはホタルがビュンビュン飛び回るドームに入るので、ホタルとの距離が近いです。
せめて家を出るときにスプレーをするか……いや、虫よけ自体しないほうがやっぱり「イェー!!」「ひゃっほー!」と嬉しそうに飛び回っているホタルのためには良さそうです。
わたしもゼラニウムスプレーをつけてて、ホタル的に「くっさい奴」だったと思います。申し訳なかったです。反省……。
ちなみに夫は、「つまちゃんが隣にいるとつまちゃんに蚊が集まるからぼくは刺されない」とのことで無事でした。
一番効果のある天然の虫よけってもしかしてわたしなのか……!!
申し込み(事前抽選)とアクセス
荒川区ホタル観賞の夕べへの申し込み方法
虫刺されはつらいけど、また来年も観に行きたいなあ。
ちなみに、真っ暗な夜の公園のスロープから見る「ゆいの森あらかわ」の建物や走る都電の明かりもきれいで、なかなかに情緒がありました。夜の図書館の窓から見える、人が本を選んだり読んでいる光景って宝石みたいで素敵ですよねえ。夜の公園はふだん入れないので、なんだかデンマークのブラックダイヤモンドと呼ばれる王立図書館を夜の運河から見たことを思い出してうっとりしてしまいました。
ゆいの森あらかわは、荒川のブラックダイヤモンドと名乗っていい。
話がそれました。
「荒川区ホタル観賞の夕べ」への参加は抽選制で、6月頃に往復はがきでの申し込みが必須です。
参考までに2018年度のチラシはこんなかんじでした。
2019年も待ち遠しい!
チラシが手に入らなくても申し込み方法は事務局ホームページに掲載されるので、毎年6月にはチェックを!
http://hotarunomati.web.fc2.com/
当日の開催の有無もこちらのホームページで確認ができます(当日14時に更新)。
また、ホタルの会では会員も随時募集していらっしゃいます。ホタルの里親活動と勉強会などを開催されていますので、興味のある方は応募してみてはいかがでしょうか。
※あと、イベント当日は公園内に入ると自販機などはないので飲み物は買ってから行ったほうがいいです。
他にも荒川自然公園ではオオムラサキやカブトムシ、秋の虫を観察できるイベントなどを催しています。詳しくは荒川自然公園の公式ブログにて〜。
アクセス
荒川自然公園のスロープのところで受付。
都電荒川線「荒川2丁目」停留所下車
荒川区コミュニティバスさくら「荒川自然公園入口」下車
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▼ホタルを見たあとは飲みに行きました。ホタルのおかげでお酒がうまい。