荒川区に住んでます-うちの夫観察絵日記-

荒川区在住30代夫婦の日常。三度の飯と夫が大好きな妻による、夫観察絵日記ブログです。

三越納涼寄席に行ってきた〜桂歌丸さんを偲んで

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歌丸さんの『長命』、やっぱり観たかったです。夫にもあらすじを話したら「それは観たかったなあ」と言っていて。ただその後「つまちゃん、歌丸さんが演るはずだった落語のタイトルなんだっけ。ぼくが長生きしそうだってやつ」 と言い放った夫のことは一生許さん

 

久しぶりの落語! 

日本橋の三越劇場で、三越納涼寄席に行ってきました。

今回の寄席は夫がずっと「歌丸さんを観たい」と言っていて、運良くチケットが取れたので夫婦で楽しみにしていました。

しかも歌丸さんの予定していた演目は『長命』。これは外で恐妻家ぶっている夫と観るのにもぴったり。 

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歌丸さんは怪談噺のときしか高座で観たことがなかったので、今回は楽しい噺をしてくれるんだなあと思ってワクワクしていましたが、6月の時点で体調不良により林家木久扇さんの代演が決まり、それでも「今回は観られなくてもきっとまた復活してくれるさ」と楽観していたので、まさかまさかの訃報でした。

心から残念でなりませんが、ニュースでの記者会見だったり、今回の劇場でもお弟子さんたちは歌丸さんについて「師匠が楽になって本当によかった」とおっしゃっていたので、壮絶な闘病の末、ようやくお休みになられたのでしょう。

物心つくかつかないかの時分に笑点を観て、最初に覚えたメンバーが当時は楽太郎さんと掛け合いをしていた毒舌の歌丸さんだった気がします。おつかれさまでした。

 

三越納涼寄席

さて三越納涼寄席の感想。

うろ覚えなところが多いのでごめんなさい。 

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開演時間前に始まった前座はまるで口の体操のような古典落語『金明竹』(席に着く前に始まっていたので、演者さんのお名前がわからなかった……)。じゅげむ系のビャーッと早口で長台詞を喋りまくる落語です。いきいきと演じられていて面白かったです。

 

『源平盛衰記』

いよいよ高座の始まり。三代目桂枝太郎さんは歌丸さんの最後のお弟子さん。

「歌丸の告別式へようこそおいでくださいました……」と笑いを取り、「師匠は三越劇場が好きでした。私が22年前に岩手から出てきて弟子入りしたときに、劇場の隣の甘味処(雪月花)に連れて行ってもらいました。師匠はクリームソーダを頼んで、お前も好きなものを頼みなさいというので2800円の松花堂弁当を頼んだらクビを言い渡されて」と思い出話やお見舞いに行ったときの話を楽しく。そして地噺の『源平盛衰記』。

義経と弁慶の場面では義経がリコーダーを吹いていたり話がアッチャコッチャ飛んで笑わせてくれますが、語りはいよいよ追い詰められた義経の最期へ。妻子を斬り、自らの喉に刀を突き立て絶命する義経を鬼気迫る語りで描くと、視点は戦で焼け野原となった荒野を、義経伝説を語りながら歩く親子の姿となり幕。このラストの瞬間、会場じゅうが蝉の声に包まれて、眼前に親子が現れ蝉の声のなかに消えて行った気がして、ぞわりとしました。夏らしくドラマティックで、すごく面白かったー! 

夫も枝太郎さんまた観たいな、と言ってました。

 

『たがや』

続いては歌丸一門の総領弟子の桂歌春さんによる『たがや』。

歌丸さんについても触れてくださいました。4月に倒れてから2ヶ月は固形物は食べられなくて、呼吸器で鼻が擦れて傷ついてずっと痛がっていた。今はきれいに化粧をしてもらってお気に入りの着物を着て、いつもどおりの品と色気があって今にも高座に上がりそうに見える。「まるで中尊寺のご神仏か生ミイラでした」と、しんみりしそうなところを笑いで〆。落語家の一番の望みはお客を残すこと、これからも落語に足をお運びください、という話でした。

『たがや』は「たまやかぎや」でおなじみの花火の掛け声をまくらにして始まり、江戸っ子のたが職人(たがや)がお侍とケンカする、夏らしい古典落語です。

たがやに斬られた侍の首がスポーンと花火のように飛んで、周りが「たーまやー」ならぬ「たーがやー」と掛け声をするという、なかなかな展開なのですが……侍を斬ったたがやのその後を考えるとなんかわたしはスッキリしないんですが、江戸っ子はいいのだろうか。

 

おたのしみ

そして本来は仲入り前のここで歌丸さんの出演の予定でしたが、代演で笑点メンバーの林家木久扇さんが登場。「大入りありがとうございます」とニコニコ。

歌丸さんはサービス精神旺盛だから、お見舞いに行ったときも「パンダのごはんはパンだ!」とパ行の発声練習を見せてくれまして……と始まりましたが、いつのまにか立川談志師匠が選挙に出馬したときの物真似になっていました。木久扇さんワールド。

そしてまた歌丸さんの話に戻り、一緒に出演した時代劇の話や、歌丸さんとはせんべい好きなところで気が合っていて、せんべいといえば人形町の草加屋で紋入りの缶のせんべいを作ってもらっていた三木助師匠が亡くなったとき、大量の缶が余ってしまってお店が困り、

「わたしも30缶くらい引き受けましたけど、あのたくさんあったカンカン……どうなったんでしょうねえ?

とボンヤリ呟いてこの話は終わり。 衝撃的な〆でした。

それから話は人形町生まれの木久扇さんの少年時代の思い出へ。戦時中に人形町の家のラジオで空襲警報を聞いていたところ、ラジオにホコリが詰まっていて放送がどうも途切れ途切れで聞こえづらいというところからの「詰まったラジオから流れる空襲警報の物真似」、そして人形町の家が戦火で全焼し、西荻窪の親戚を頼って移り住んだ先の映画館で夢中になった映画の話。そこから往年の映画スター片岡千恵蔵氏の物真似。

木久扇さんは片岡千恵蔵に何か恨みでもあるのかというくらい「私は顔が長い人となにかと縁があるんですけどね、片岡千恵蔵が顔が長くて頭巾までするから、モゴモゴ何言ってんだかわからない」とモゴモゴ喋る片岡千恵蔵の物真似を続ける。

テレビで観る木久扇さんらしいバカバカしい話でしたが、隣で夫が笑い涙を流してヒーヒー笑っていて(泣いてまで笑っている人は周りにはいなかった)、夫の笑いのツボがちょっとわからない。

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片岡千恵蔵と言われても顔すら浮かばない、世代ではないわたしたちでもこんなに笑っちゃうので木久扇さん凄いです。

演目は『おたのしみ』とのことでしたが木久扇さんの新作落語『昭和芸能史』だったのかな? なんかいろいろ混じってて、初めて観るかんじの落語でした。面白かった笑。

 

『天下無双』

そうしたら仲入り明けの活動写真弁士の坂本頼光さんの演目が片岡千恵蔵の作品(『天下無双』)だったので、「片岡千恵蔵主演」と言っただけで客席がどっと笑って盛り上がりました。歌丸さんは千恵蔵びいきだったそうです。

 

『もう半分』 

そして最後は桂米助さんの、ちょっと怖い噺『もう半分』。

米助さんは歌丸さんの弟弟子で、テレビでは「ヨネスケ」として『突撃隣の晩ごはん』という番組でお馴染みの方です。

『もう半分』は三遊亭圓朝作の怪談噺で、舞台は永代橋のたもとの二畳敷の安居酒屋(ちなみに噺家によっては千住大橋の安居酒屋バージョンもあるらしい)。

店にふらりと現れたのは、乱杭歯に白髪でボロボロの身なりの爺。何度も何度もお銚子に酒を半分ずつ注文しては「お手数かけますが、半分ずつ頼むと量が倍になった気になるんですよ。もう半分お願いします」とゲへゲへ笑ってはぐびりぐびりと飲み干す。

しかし酔っ払った爺が店に忘れていった財布を見てみると、中にはなんと50両もの大金が。驚く酒屋の店主夫婦。おかみさんが旦那をそそのかし、返してくれと店の前で懇願する爺を打ちすえて財布を奪ってしまう。実はその金は爺の娘が吉原に身売りして作った金。爺は酒屋に割られた眉間を押さえつつ恨みの言葉を吐きながら橋から身を投げます。

やがてその爺のお金で大店の主となった夫婦のもとに赤ん坊が生まれますが、これが爺にそっくりな醜い赤子で、おかみさんはショック死してしまう。しかも夜な夜なその赤子は……。という話。

爺が酒をしつこくしつこく「もう半分、もう半分。あたしは"後引き上戸"でして」とおかわりする姿は、最初はユーモラスなものの、酒に執着する爺のしつこい姿に辟易するし(米助さんが気味悪くねっとり〜と演じる)、金に目がくらむ酒屋夫婦の浅ましさ、そして妖怪のような赤子と、何から何まで不気味な噺でした。ヒー。

 

以上で幕。

納涼にふさわしい噺をたっぷり楽しませていただきました。

歌丸さんの訃報の直後の一門会となってしまったので、噺家さんたちは大丈夫かな……と余計なお世話ですが心配していましたが、どんなときもお客の前に立てば芸を見せなければいけないという芸人の気迫と矜持を見せていただいた気がします。

初めて観た方で、また観たい噺家さんとも出会えたし、楽しい1日となりました。

 

落語、面白かったー!!! 

 

おわり。

 

▼以前サンパールで観た小遊三さんと円楽さんの二人会も歌丸さんのお話が多かったです。みんな歌丸さん大好きなんだなあ。