東京JAZZの日曜昼の部に行ってきました。
すっごく楽しかったです!!!
プログラム1番目はジャズ誕生100周年の歴史を祝い、その足跡を辿っていくスペシャルライブ「CELEBRATION!」。ディレクションは作曲家の狭間美帆さんで、ビッグバンドを伴っていろんなアーティストが代わる代わる出演する豪華なステージ。
ジャズの歴史は1917年、”JAZZ"が"JASS"だった頃に始まり、その頃はマーチング・バンドの音楽に影響を受けたスタイルだったとか。へー。出てきたのはニューオリンズからトレメ・ブラス・バンド。とっても楽しいマーチングで、会場を一気に盛り上げます。
客席を練り歩いてくれました。↑この傘欲しい
次の時代に台頭したスゥイングジャズの紹介ではダンスユニット(なのかな?)アモーレ&ルルの激しいダンス。スゥイングを見ると、昔のミスドを思い出すのはなんでだろう。
そしてビバップで登場したのはトランペットの日野皓正さん。エキサイティングな演奏で魅せてくれて、会場からもドカンと熱い拍手。トランペットの音の哀愁はまさに男の色気ってかんじで、ライブで聴くとやっぱりいいなぁ〜とうっとりします。
続くクールジャズの部。付き人?に手を引かれフラ〜と出てきたのは公園のベンチで新聞を読んでいるところを連れてこられたみたいなおじいちゃん(そう見えた……)。
ちがう、おじいちゃんじゃない、来月90歳のバースデーを迎える伝説のアルトサックス奏者、リー・コニッツだ!!
フラフラ〜とマイクの前に立ち、サックスに息を吹き込んだ途端!
彼の背中からパノラマのように広がるのは、カモメ飛ぶハドソン川の岸べ、ナイトクラブの煉瓦の壁に映る影……いつかの風景……(全部イメージです。ハドソン川いったことない)。
なんだか古い本や酒瓶、フィルム、喧騒、うまく言えないけれど平たく言えば「時代」を内包しているような音色。だけど感傷的ではなく、それらを通り過ぎるままにしているような余裕が心地よい。
NHKホールなどちっさい箱なのだ
ふっ、とサックスを降ろして、独り言のように歌ったり、踊る(踊りながらマイクスタンドから遠ざかっていき、付き人にあわてて戻されていた)姿は自由でユーモアに溢れていて、いかにも耆宿のジャズマンってかんじで格好良いです。
人生いろんなことがあるけど、人間であることの一番の楽しさはこれなんだな、と思いました。
クスリとしつつも、演奏には鳥肌が立ちっぱなしで涙もじわり。今も思い出したら泣き笑いのようになってしまいます。素晴らしい演奏を聴くことが出来て本当に良かった!!
もっといろいろ聴いてみたいなと思って、帰宅後Prime musicやらapple musicを聴きまくり、まずはものすっごく好みな『Motion』というアルバムを買ってみました。61年収録のスタンダードナンバーの即興なんですが、原形がわからないくらい自由にアレンジしていて、その自由さと格好良さ、洒脱さが東京JAZZで見た姿と演奏から受けたイメージに重なります♡。CDが届いたのでさっそく、リピートして聴いてます。格好良い〜。
今年発売された最新作『Frescalalto』も、ライブのときのような渋い歌声を聴かせてくれるとても幸せな気持ちになるアルバム。試聴して注文したんですが、届くまで1ヶ月かかるってさ……。
apple musicで聴けるのに、やっぱりCD買っちゃう。リー・コニッツを聴きまくる旅は、これから超長旅になりそうです
次はモダンジャズ。山下洋輔さんの自由で挑戦的なピアノ。ピアノに火を着け、燃え盛るピアノを弾く『ピアノ炎上』という自身の過去の映像作品と併せた演奏。演奏中の背中と鍵盤に叩きつける拳が凄く若い。叫ぶピアノは楽器というより、演者の器官がむき出しになって舞台上に存在しているみたい。汗でベタついた髪を振り乱したギラギラした目の青年が弾いているような気持ちになって聴いていたら、演奏が終わって振り向いた姿が穏やかな笑顔のおじさんで、一瞬「あれ?」となりました笑。
そして時代はフュージョンジャズへ。「フュージョンといえば?」と聞かれたら、詳しくないわたしでも「リー・リトナー?」と答えるところ、リー・リトナーが手を振りながら出てくるこのステージの豪華さよ……。
なんか頭も胸もいっぱいになってきた。なんてプログラムだ。
おなかもすいたし
〆は多様化するジャズの世界。
オルガン奏者のコリー・ヘンリーが『聖者の行進』のアレンジで登場。
コリー・ヘンリーも初めて聴いたけど、すごく楽しい!!
リズムに自然と体が揺れて、というかお尻が自然と椅子から浮いて、もう立って踊りだしたくなる音楽でした。もっと聴きたかった〜。
こうして「CELEBRATION!」は大盛り上がりのなか終了。JAZZの歴史をビッグゲストとまとめ上げた狭間美帆さん、そして様々なスタイルの曲を弾きこなしたデンマークラジオ・ビッグバンドが一番たいへんだったに違いない。見せ場もあり、素晴らしかったです!!
去年の東京JAZZは日曜昼と夜の部を両方見て、楽しさ以上にわたしは頭が疲れたので(だから日記にも書けなかった……)今年は昼の部だけにしたのに、もう最初のプログラムでへとへと。
しかし!
2番めのプログラムはシャイ・マエストロ・トリオ。
日曜昼の部を選んだ一番の理由が、このイスラエル出身の天才ピアニスト、シャイ・マエストロ率いるバンドを聴きたかったからなのでした。イェイ。
今回のライブではチリ出身の女性ジャズギタリスト、カミラ・メサをゲストボーカル&ギターに迎えていたのですが、「without words」から「From one soul to another」がもう、凄くて。
歌詞は無く「ロ・レ・ラ・レ・ロ」とまるで太古の言葉か呪文のような、不思議な音に乗せて歌う声、そしてピアノとコントラバスとドラムがまるでひとつの川のように、穏やかに流れ、弾け、激しくぶつかり、そしてまた一つになって流れていく。
この自分たちが作る大きな川の中心で互いに寄り添うみたいに、広いステージの真ん中にぎゅっと固まって、とても嬉しそうに微笑み合いながら演奏する彼らの姿も印象的でした。
「曲の展開はまさにelevationとしか言いようがないよ!」by夫
夫が隣で「これは凄く大事なことを伝えるメッセージの曲に聴こえる」と、ずっとズビズビ号泣していて、演奏が終わっても彼は席から立てずに泣いていました。
アルバム音源ではボーカルがグレッチェン・パーラトなのですが、カミラ・メサverも良くて、そしてとにかく今回の「From one soul to another」が凄かった。ライブ音源をアルバムで欲しいです。出してくれー。
さて、夫もわたしも感動しすぎて既にボロボロ、まだあるのか東京JAZZ。
楽しいのに頭が限界
最後のプログラムはチック・コリア&ゴンサロ・ルバルカバ。
一瞬足りとも聴き逃せない、見逃せないこのピアノデュオ。ああ緊張した!
ピアノ・デュオで印象に残っているのは昨年の東京JAZZで観たミシェル・カミロ&上原ひろみさんのエネルギッシュな演奏。まるで2匹のライオン(豹かも)がじゃれ合いながら疾走しているような、そんな演奏でした。(本当に素晴らしかった!)
今回のチック・コリア&ゴンサロ・ルバルカバは昨年のデュオとは全く違う個性。
岩に打ち付ける波とか、渡り鳥と風とか、洞窟に落ちる水音とか、そういうものの対話のような……。
とても美しい音が聴こえている、ということ以外はよくわかりませんでした。
わたしよりいろんなジャズピアニストのライブを聴いている夫も「難しすぎてぼかぁ眠くなってしまったよ……」との感想。
ということで、東京JAZZ昼の部は予定時間を押して終了!
ホールの外に出たら、トレメ・ブラス・バンドが楽しげに演奏していたので、なんだかあの最初のマーチから魔法にかけられて、ずっと長い夢を見ていて現実に戻ってきたような、そんなクラクラした抜け殻の気分になりました。
屋台がたくさん出ていたので、ラーメンを食べて帰りました
帰りの電車のなかでも最後のプログラムについてずっと考えていて、自分が今までに出会ったピアノ・デュオを思い出そうとしたのですが、映画『ロジャー・ラビット』でドナルド・ダックとダフィー・ダックが「Hungarian Rhapsody」を弾いて最後に爆破し合うデュオしか浮かばなかった。
そして音楽に号泣していた夫は、泣いて体力を奪われたのか帰っている途中で風邪を引きました。その風邪が予想通りわたしにうつったので、いま目の奥が熱いのは当日の熱を思い出しているせいか、本当に熱が上がっているせいかわからない。
東京JAZZ2017、忘れ得ぬとっても楽しくて幸せな1日でした。
今回のチケットは、父から8月生まれのわたしたちへの誕生日プレゼントでした。最高のプレゼントをありがとう父!
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